ピアノ奏法 その4 〜 弾き分け動画〜
これは、大きく3つのタイプに弾き分けて演奏したもので
狙いは、音(音質)の違いです。
音の違いは、指の形を変える(→鍵盤への触れ方が変わる)だけで
変化をもたらすことが可能ですが、
この動画では、それではなく
力の位置の違いを意識して演奏しています。
ピアノの緻密さによって、確かに
指を立てる、指を平たく使う、指を手前に引っ掻く、指を奥へ逃す…etc
鍵盤と指の触れ方を少しでも変えれば、良い悪いを抜きにして音は変化しますが、
(聴き取りのレベルも、訓練次第で変化する)
ここでは(全く同じというわけにはいきませんが)
なるべくそれによるものにならないよう意識している
という意味になります。
残響や響きに関しては、録音環境がアビテックスの防音室になりますので、
通常より壁に吸い込まれていることは否めませんが、
(敏感な人が初めて部屋に入ると耳に閉ざされた感覚を持つレベル)
その中、同じ日にちでも、朝夕の空気の変化で
音に違いは出てしまうため、
録画は、時間差を最小限にすべく3つ間髪入れない一発撮りにしました。
ウナコルダ(ソフトペダル)は
一切使用していません。
(あくまで奏者の意識下の表現ですが)
ざっくりとした分類にすると
①は、指先
②は、前腕(肘から下)の下側
③は、上腕(肘から上)の上側
に、力を意識したものです。
①と②は、
力の位置が近くなるので音の質が似ているように感じますが、
広がり方に違いが聴き取れます。
(①から②に移った途端に音の広がりが長なるように聴き取れます)
「(腕を)ぶらぶらして、だらりとして」という表現は、
重力に従った感覚から得られたイメージの言葉と思われるので、
前腕下側の意識の点も相まり、
この中でいえば、②が一番近くなると考えます。
③は、①と②とは随分離れた上腕(肩)になるので、
異なった音質が聴き取れます。
綺麗な音のためには
鍵盤を全部下ろしてはいけない すなわち浅いところを狙うとか
鍵盤を長く押すことなく、なるべく短くタッチしましょう、などと
言われていますが、
重力奏法が、自然に落下する力に従い、
重さをかけるという表現に至るならば、
それらは作用点の相反する向きのテクニックになるため、
長きを要する訓練技と表されることも納得です。
ピアノの鍵盤は視覚的には下向きに動くため、
ブレーキとアクセルを同時に踏んでいるような論理は
一瞬脳内パニックしそうですが、
著名なピアニストがそれを介していると言うならば、
その他の部位も含めたそれぞれの身体の駆使で、
魅力的な音に結びつけているのだろうと、
私は考えています。
(続く)