ロシア奏法とマロ―エフ(Alexander Dmitrievitch Malofeev)氏


その昔、プライベートレッスンの募集詳細に
「ロシア奏法を習いたい方」とHPに出されていた先生のところへ、
1回だけレッスンを受けに行ったことがある。

「(この先生が言う)ロシア奏法とは、なんだろうか。。。」という疑問を解明したく。

ちなみに、ポーランド時代の恩師は、ロシアへ留学したポーランド人だったが、
これはロシア奏法だ、というような文言をレッスン中に聞いた記憶は、無い。

直接「HPにありましたロシア奏法って何ですか?」とお伺いしたら
「ロシア奏法ってものは、厳密に言うと…ありません」とお返しになった。

外見の判断にゆだねても、ロシア人ピアニストも、
奏法はそれぞれで異なっている。

ロシアの若手凄腕ピアニストと言えば、
2021年のショパコンに出場するかしら。。。と思っていたけど出なかった
マロ―エフ(Alexander Dmitrievitch Malofeev)君。

可愛い金髪坊やだったが、もうすっかりナイスガイの大人な男性になったので、
マロ―エフ氏と言うべきか。

あくまで私の目が正確ならば…だが、
彼は、ショパコンでブルース・リウの時だったか、
黒いマスク姿で一階席の客席に座っていた。(他人の空似だったら御免なさいm(__)m)

集中するときの姿勢は、客席でも同じように見えた。

マロ―エフ氏とエヴァ女史(先回のショパコンファイナリスト)が連弾している動画を見ると
ロシアでの奏法も色々なんだろうな…と、とても興味深い。

共通点が見えない奏法の違い。
マロ―エフ氏はセコンドで、少々エヴァ嬢に合わせているような節を感じるけれど

彼の魅力は、聴こえないほどの弱音を
ヒョウヒョウとした表情とは裏腹に、とてつもない多様な変化で繰り広げるところ。

二人の音質の違いは動源の差異にあるのは当然だが、
彼の身体の使い方は、協奏曲などで瞬間的に見える筋肉の使い方が別格。
最近は更に背の姿勢がアップデートされたように見え、
椅子の低下に比例して安定さが増しているような気がする。

頭脳からの無限のタッチが命令され
それに応える筋肉と神経の別格のコンビネーション。
指先に伝わるその過程は、あーする、こーするなんていう思考の次元スピードではない。

曲の頂点を、感情のピークと共にここ一番で表現するパフォーマンスは
実に効果的で、しかも変な意図的でもなく違和感がない。

形ではなくスピードでコントロールしている故
音の渋滞が無く、打鍵の深さが揃ったその羅列は実に美しい、、、、と私は勝手に思ってる。

 

彼の演奏は、海外の巨匠らと同じく下部雑音が無いように感じる。
これは、聴く人の好みで印象はそれぞれの感覚によって大きく変わるのだろう。

「オヒカエナスッテ」奏法を好む人には、馴染めない音に感じられたりもするだろう。

彼の指先は、アップに映ったときに分かるが、まずまったく爪がないのが特徴だ。
先っちょがまん丸である。
爪はもちろん付いているが、とにかく白い部分が無い。おそらく…いや絶対食べてる、
気がするほどだ。

身体は、決して巨体型ではないけれど、
重心が微動だにしない演奏スタイルは、マツ―エフ氏と重なるところがある。

(今からしたらもぅ考えられないかもしれないのか…)

マツ―エフ氏との二台ピアノ共演の動画があるが、
あれは、見事に二人がシンクロしていて、その姿がまるで親子みたいで、絶妙に可愛い。

エヴァ嬢の弾き方は、日本人のファンも多い演奏スタイルだろう。
よく聞く「魂を感じる」とか、「豊かな感情が迫り来る」とかが合いそうな、
エモーションいっぱいの表情が乗っかった渾身の演奏スタイル。

エモーショナルと観衆が見て感じるであろうあの腕の動きと、
最初から最後まで腰が浮かせたり座ったりする上下の筋肉運動がとくに特徴的だが、

40代、50代になっても
あのスタイルのまま維持し続けているのかな、、、と
未来が見てみたくなる。

私はあまり分かっていないので書いてはいけないけれど
昨日からウクライナのミサイルの件で、ネットの中だけでも末恐ろしい騒ぎになっている。

彼が前回のチャイコフスキーコンクールに出なかったのは、
ロシア人だからこその、戦争に対する絶対的抗議の姿勢だったようだ。
マツ―エフ氏との関係も微妙になってしまうのか…

それほど前回のチャイコンは、
少なからず東欧西欧諸国の有望ピアニストが、参加をとりやめたのは間違いなく、
マロ―エフ氏のようなロシア人にとっても複雑なものだったに違いない。

さらにマロ―エフ君がカナダで受けたボイコットに対する思いは、いかばかりか。

若い彼が訴えた「肝心なのは流血を止めることである」という言葉。
親族がいるウクライナと祖国に対する彼の気持ちを考えると、居たたまれない気持ちになる。